長い間、新規事業やプロジェクトの立ち上げばかりが回ってくる仕事をしていて、最終的に、無料のカフェに落ち着いた。
おしゃれでいいね、とよく言われたけれど、10年が見えてきたあたりで、駅のホームに立つと吸い込まれそうになる時期があった。
原因がよくわからないけれど、今の負担を減らすにはとにかく、この仕事を辞めなければいけない気がしていた。
でも気づいたら、
今は「ここ以上に自分に合う職場はない」と思えている。
そう考えられるようになった理由はたぶん単純で、多くの人から言われた「頑張らない」ができるようになったからだと思う。
ただ、当時は
「頑張らない」が何を指すのかは分からなかったので、
自分の意見を言うこと。
一つだけ明確に、これをやめてみた。
アドバイスをしない。
聞かれても、答えを出さない。
少し経つと頭に「なんで?」が浮かんだ時が一番意見を言いたくなると観測できた。だからそれを、言葉にして回答しないように「言わない」を徹底し、半年ほど続けた。その間、いろいろなことがうまく回らないように見えた。
あらゆる問題が構造的に見えて、場をまとめ上げるための発言は禁断症状のようになっていた。一言放てば、場のほぼ全員が楽になるのに…と思いながら堪えた。
誰かが戸惑い、
誰かが不機嫌になり、
場はかなりざわついた。
それでも沈黙を続けた。
そのあと、自分が「回避策を出す係」から外れていることに気づいた。
代わりに、別の人がその役回りに入り、無策である点を批判されていた。
もし前のままだったら、そこに向けられる感情は全部、自分が黒子となり、そのストレスも引き受けた上で場を納めただろう。
役割が外れると、思ったより静かだった。
何かを失った感じではなく、ただ、静かでだった。
今はここに立っている。

